3.人間尿瓶 芸能界に身を置いてみて初めて、いかに猪狩会長の権力が絶大なものであるかを、亜季は思い知らされていた。 亜季が猪狩御殿で、屈辱の全裸排尿オーディションに合格した翌日。 すぐさま「炎上みるくプロジェクトチーム」が組まれ、マスメディアへの猛烈な露出が始まった。 雑誌グラビア、CM、ポスター、取材、握手会、番組出演、写真集の撮影…次から次へと仕事をこなしていく亜季。 さらに歌や踊りのレッスンも受け、週に一度は猪狩御殿に赴かねばならない。 多忙極まりない日々の中で、亜季の心身は疲れ果てていった。 そして今日は、猪狩御殿への訪問日。 猪狩の言いつけどおりに、テレビ番組の収録を終えて直ぐ、ステージ衣装のままでやってきた亜季。 美少年メイド・今泉に案内されて客間の一つに入ると、床にはビニールシートが敷かれていた。 その上に横たわる全裸の老人、猪狩。 「おう、待ちかねたぞ。はようはよう!」 横たわったままで、老人は嬉々として手招きをする。 今泉が、亜季に耳打ちする。 「前回と同じように、お願いします」 亜季は黙って頷いた。 芸能界でサクセスしていく為には、猪狩会長の命令には従わねばならなかった。 それより何より、早くこの忌まわしい儀式を済ませて、自分の部屋に帰って、ぐっすりと眠ってしまいたい…。 亜季は、躊躇うことなくスカートとショーツを脱いで、猪狩の顔の上に腰を下ろした。 猪狩の眼前に、少女の蒸れた女性器が迫ってきた。 「よしよし。シャワーを浴びずに来よったな。すごい匂いじゃぞ、みるくチャン!」 炎上みるく会員ナンバー1番の猪狩が亜季の股間に息を吹きかけると、それが合図だったかのように排尿が始まった。 勢いよく顔面に降りかかる温かい液体を、大きな口を開けて受け止める猪狩。 排尿の途中で亜季は中腰となって、猪狩の胸、腹部、股間へと尿を振り掛ける。 「けきゃきゃ。きゃきゃ。みるくチャンのオシッコシャワー!美味しいおいしいオシッコシャワー!極楽じゃあ〜」 排尿を終えて猪狩の体の上から離れた亜季に邪魔されることなく、猪狩はシートの上をコロコロと転がった。 体中が尿塗れになっていく。 「むふぁー。これ、今泉。こっちゃ来い」 「ハイ」 今泉が猪狩の前に跪く。 「失礼いたします」 老人の肉体に付いた少女の尿を、舌で舐め取っていく美少年メイド。 その行為は老人の股間にぶら下がる、萎えた性器にまで及ぶ。 「今泉」 「ハイ」 「気持ちいい。イイッ!」 「ハイ」 イボイノシシに似た顔を綻ばせて、身悶える猪狩。 丹念に舌を使う今泉の顔は上気して、瞳は妖しく濡れている。 亜季は、そんな二人の横で座り込んだまま、睡魔に襲われてユラユラと体を揺らしていた。 4.解き放たれた幹男 とある古ぼけたデパートの1階にある薄汚れた喫茶店で、麻田徹子と工藤幹男が向かい合って座っている。 二人が初めて露出撮影デートをした日に入った、思い出の喫茶店だった。 「久しぶりだね工藤クン。元気だったかい?」 「徹子さん」 「なんだい工藤クン?」 幹男はテーブルの上に両手をついて、頭を下げた。 「別れて下さい!」 コーヒーカップに伸ばしかけた徹子の手が止まった。 ―― やっぱり、ね。 喫茶店に入って、先に着いていた幹男の荒んだ風貌を見た時から、徹子には嫌な予感があった。 「オレには好きな女性がいる。ハッキリとそれに気づいたんだ。だから、今日はサヨナラを言いに来ました!」 スプーンでコーヒーをかき混ぜながら、黙って聞いている徹子。 「でも、子供は産んで欲しい。お金は出せないし一緒には暮らせないけど、だけど、産んで欲しい!」 「ゴメン」 そう言って徹子は顔をあげると、幹男に向かっていつものように、ニタニタ顔でほほ笑んだ。 「ハイ?」 なぜオレは謝られているのだろう?といった表情の幹男。 「ゴメンねー、アレ、嘘だったんだよ。工藤クンをちょっぴりおどかしてみよっかってね〜」 「嘘?」 「うん☆」 「なぁんだぁ。嘘かぁ。そっか、そっかそっか。あはははは」 次の瞬間、幹男の平手打ちが徹子の頬を襲った。 「バカヤロウ!世の中には言っていい嘘と言っちゃいけない嘘があるんだよ!」 「にひひ」 徹子は俯いて、打たれた頬をさすった。 「にひひじゃねぇよ!」 立ち上がる幹男。 「アバヨ、徹子さん。ココ、払っといてな」 レシートを徹子のほうへと押しやり、幹男は喫茶店を出て行った。 徹子はうっすらと涙を浮かべながら、両手で腹部を慈しむように撫でさすった。 「大丈夫だよ。二人で生きていこうね。にひひ」 デパートを飛び出した幹男は、両手をブンブン振り回して叫んだ。 「もう誰も、オレを遮ることは出来ない!たとえそれが神だろうとな!ははははは!」 |