「マドちゃん。今度の週末、家に遊びに来ない?」

「えッ?あー、ウン。そうだね〜。じゃあ、行っちゃおっかなー」

郷土研究部の部室で、神埼マドカは真田トウコに耳たぶを甘噛みされながら、胸をドキドキさせていた。

トウコの誘いを受ければ、絶対セックスすることになる。

それが分かっていながらも、熱烈なラブ波動を拒んで友達の関係に戻る術が思い浮かばないマドカは、首を縦に振るしかなかった。

何かの理由をでっちあげて断ったとしても、トウコはあらゆる場面で肉体の関係を迫ってくるに違いなかった。

学校の中であろうが、一緒に買い物に行ったり映画を見に行ったりしても、トウコはセックスをしかけてくる。間違いない。

もはや、逃れられない。

―― トーコにチュウされても、嫌な感じはしなかったニャ。ジュンよりもずっと、やさしかったもん。

トウコが自分の体を求めてきたら、受け入れよう。

マドカは覚悟を決めた。



週末。

とりあえず街中で会った二人。

―― さあ、トーコ。くるならいつでも来たらいいニャ。パンティーだって一番カワイイの着けてきたニャン。

映画館。プリクラ。

全く仕掛けてくる様子がないトウコ。手を繋ごうとすらも、しない。

―― トーコ、私のコト好きだって言った。これってデートだよね?なのに何でなんにもしてこないの?

「そろそろ家、行こっか」

カフェ・ド・田中クニエで、アイスキャラメルラテを飲み干したトウコが、顔を赤らめながら小さく呟いた。

―― きた!そっか、そうよね。外じゃ誰かが見てるかもしれないし。やっぱり部屋の中でよね、トーコ。いいわ。私、今日はそのつもりなんだから!

マドカにとって初の訪問となるトウコの家は、超高層マンションの35階にあった。

「おじゃましまーす」

第一関門、玄関。何事もなく通過。

―― そうよね。イキナリ玄関でなんて、ないよね。落ち着け、私!

部屋に通されると、主人の帰宅を感じ取ったネコが1匹、チョコチョコと走ってきた。

「わーネコだ〜。私、ネコ好きなんだー。このコ、なんて言うの?」

「コマドカっていうんだよ」

照れて笑いながら、トウコは言った。

「え?」

「ダメだった?」

不安げな表情になったトウコを見て、マドカは慌てた。

「ウウン!そんなことないよ!いい名前だね。エヘヘ♪」

―― そっか。自分のネコに私の名前みたいの付けちゃうくらい、私って好かれてるんだね。

ベランダからの景色を眺めた後、二人で並んでテレビゲームを始めてからも、エッチな雰囲気にはならない。

ヤキモキするうち、「ちょっと」と言い置いてトウコは部屋を出て行った。

―― おトイレかしら?あーもう、しっかりしてよトーコ!早く来て!私のパンティー、早く見て!

ゲームを続けながら、マドカは怒りまくった。

暫くして部屋に戻ってきたトウコは、マドカの横を通り過ぎた。

ベッドが軋む音を聞いて、マドカの鼓動が高まった。

―― 遂になのね。いいよ、トーコ。トーコになら、抱かれてもいいよ。ていうか、抱いて!

「マドちゃん、こっちきて」

「ウ、ウン」

コントローラーをギュッと握りしめて振り向くと、トウコは乳房を露出させて、パンティー1枚の姿でベッドに横たわっていた。

傍らでコマドカが丸まって、「ニャア」と鳴いている。



「マドちゃん、やさしくしてね」

屈託のない笑顔で、トウコがマドカを見つめている。

「えーッ!ワタワタワタシがデスカ〜?」

ショックを受けたマドカの手から落ちたコントローラーが、床を転がった。

―― 私、てっきり「される側」なんだと思ってたのに!いきなり脱いで、サァどうぞってナニ?

井上ジュンの時も、高原レナの時も、基本的にはマドカは「される側」であった。

これは、マドカにとって完全に予想外の展開だった。だが、すぐにハッと気付いた。

―― そっか!どう進めたらいいのか分からなかったんだね、トーコ。今日ずっと、そうだったんだね。

マドカには、トウコがたまらなく愛しく思えてきた。

「トーコ、私、女の子同士ってよく分からないから、下手だったらゴメンね」

ベッドに膝をついて、マドカはトウコの体を跨いで顔を寄せた。

コマドカがベッドを飛び下りて、ベッドは二人だけの世界になった。

「夢みたいだよ。マドちゃんと、結ばれる日が来るなんて」

トウコは大きな幸せに包まれて、一筋の涙を流した。

マドカはトウコの涙を舌ですくって「しょっぱ☆」と言って、笑った。


アナザーワールド・マドカ×トウコ



フタナリ女と少年少女



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