物が床に散らかっていて、可愛らしい小物もヌイグルミの一つも置かれていない部屋だった。 「なんかーオレの部屋と、あんま変わんないっすね〜」 初めて立花ケイの部屋を訪れた井上ジュンは、素直に感想を口にした。 さすがに毎回カラオケボックスでセックスするわけにもいかず、かといってホテル代も高くつく。 仕方なくケイは、自分の部屋を使うことにしたのだった。 「うるさいよ!脱げ、井上!しゃぶってやるからチンポ出せ!」 「またそんないきなり。ガサツっつーかなんつーか。勿体ないよなァ」 「ああ?なんか言ったか?」 「なんでもネェっすよ〜」 * 赤城ユカ×高原レナの白昼セックス実況報告があった後、ケイのケータイにユカからの着信が何度かあり、留守電にもメッセージがあった。 「ごめんねー仕事中に。レナちゃんが電話しろって言って、それで…」 ―― 仕事中だとか、そーいうんじゃなくてさ〜。もうオレ抜きでレナとしちゃってるってトコにヘコんでるってのに。ああ、全然わかってない! 怒りにまかせて、取り返しのつかないことを口走ってしまうんじゃないか? そう考えるとケイは身動きが取れなくなってしまい、仕方がないので放置することにした。 それでも「井上パワーアップ計画」は、連日続けられていった。 ジュンがフタナリの体に慣れてゆく事はすなわち、ケイの体がジュンの体に馴染んでいくことでもある。 ケイは常々、自分は女性器よりも男性器によって快感を得るのが好きなのだと、思い込んできた。 しかし、ジュンと肉体関係が進んでいく中で、女性器による快感も飛躍的に大きくなりつつあった。 ―― オレのオマンコ感度、UPしてきてる。すげえ奴だよ、まったく。レナのヤロウ、井上のどこが不満なんだ? 何度もジュンの唇と指で女性器に愛撫を受け、膣の壁を肉棒で擦られるうち、ケイの絶頂感は高まり、間隔が短くなってきている。 ジュンのセックス能力を高めるのが計画の目的ではあったが、それは同時に、ケイの性感帯も高めつつあった。 女性器の感度は、特に著しく開発されていた。 ジュンとの性交で、ケイは初めて潮を吹いたのだった。 * 「こうしてる時って、立花サンも可愛いんだけどなー」 ジュンは腰の動きを止めて、快感に身を委ねて喘いでいるケイを見つめた。 「バッバカ!なに言ってんだよォ」 ケイは「カワイイ」という単語にハートをキュンと突かれて顔を赤らめつつも、ジュンの手を取って自分の男性器へと導いた。 「井上、手が遊んでる。フタナリには性器が二つあるんだって言ってるだろ。忙しいんだぞ、フタナリを相手にするってのは」 「はぁーい」 ジュンは一旦体を起してケイの男性器に涎を垂らし、手コキをしながら、ゆっくりと膣の中での動きも再開する。 「あッ!スゴ…」 さらに乳首を甘噛みされると、ケイはガクガクと体を揺らせて、あえなく達してしまった。 「イッちゃいましたね?」 手に付いたケイの精液を舐め、ジュンはやさしく笑った。 「うー。確認するなよぉ〜」 恥じらってそっぽを向いた頬にキスをされて、ケイはますます赤くなった。 「うをぉぉぉぉぉー!」 ジュンは雄叫びを上げて、レベルマックスで腰を使い出す。 「あーッ!スッゴイ締め付け。立花さんのとろふわマンコ、チョー気持ちイ。あー出る出る!チンポ汁出る!をおおッ!」 「んっ、あぁッアッ!あぁ!」 「出るッ!立花サンのエロいアクメ顔見ながら、マンコに中出しするッ!」 ―― うぁぁ!イッちゃう!井上のマグマザーメンで、マンコアクメきちゃうぅぅぅぅぅ! 膣の中に精液の迸りを感じて、ケイはジュンの体にしがみつきながら、大量の潮を撒き散らした。 * ―― もうちょっとオンナノコっぽくしたら、井上もっとパワーアップしていくんじゃないかな? ジュンが帰った後、鏡を覗き込みながらケイは考えた。 学生の頃から周りの人は、ケイに対して「男成分の方が多いフタナリ」だとして接してきたし、自分もそれを当然のようにして生きてきた。 今、ケイは初めて「心の中のオンナノコ」を意識し始めていた。 ―― もうちょっと髪のばしたり、メイクとかもして。口紅とか?べっ別に、アイツに可愛いとかもっと言われたいとか、そーいうんじゃなくて、サ。 ケータイには相変わらずユカからの着信とメールがあったが、放置し続けている。 レナと体を重ねているユカに対して愛情とは真逆の感情が湧きあがり、自分も同じことをしてやろうと、ケイは思っていた。 ―― 買い物に付き合ってって言ったら、井上、ついて来てくれるかな?あと、立花サンて呼ばれてるけど、ソレってどーなんだろ? そんなふうに考えていると、来訪を告げるチャイムが鳴った。 ジュンは帰ったばかりであり、引き返してくる理由もない。 ケイは嫌な予感を胸に抱きつつ、そろりそろりとドアに近づいて、覗き穴から外を見た。 そこにはユカが立っていた。 ―― ひぃ! 心臓が口から飛び出すほど驚いて、ケイはのけぞった。 「ケイちゃーん」 ドアの向こうから自分を呼ぶユカの心細そうな声を聞きながら、忍び足でケイはドアから遠ざかって行き、ベッドの上に座り込んだ。 再びチャイムの音。 ―― 会いたくない!コワイ!コワイよ〜! 掛け布団を頭から被り、ケイはブルブル震え続けた。 郵便受けから何かを入れるような音がして、ユカは帰って行ったようだったが、それでも暫くは立ち上がれなかった。 30分ほどしてから、ようやく郵便受けを開けると綺麗な便箋が1枚きり入っていて、そこには「仲直りしたいです」とだけ書かれていた。 「ふぇ〜ん」 ケイは迷子になった幼い子供のように、泣きじゃくった。 |