(株)吉兆テック入社2年目の「女子」社員、立花ケイ。 管理課に所属している彼女の主な業務は、書類作成、伝票の起票、検算、電話応対、来客接待、毎朝のお茶出しである。 勤務時間中、パソコンに向かうケイの傍らに置かれたケータイ電話が鳴り、直ぐに止んだ。 画面を見ると、赤城ユカからの着信だった。 ―― 珍しいなこんな時間に。ナンかあったんかな? ケータイを手にそそくさと事務所を出て、誰もいない給湯室へと移動してリダイアルすると、ユカのけだるげな声がした。 「あー、ケイちゃん。あのね・・・」 熱でも出してのレスキューコールか?と思う間もなく、すぐさま別の声が取って代わる。 「お仕事、お疲れさまデース」 高原レナだった。 ケイの血液がグラグラと沸騰する。 二人の声の艶めかしい雰囲気から、電話機の向こうでの情景が脳裏に浮かんできて、気が滅入る。 聞けば、認めたくない現実を突きつけられるだろう。 それでもやはり、聞かねばならない。 ケイは気力を振り絞って、声が震えないようにと気遣いながらレナに聞いた。 「何してんだよ?二人で」 「サァ、何でしょ〜♪」 クスクス笑うレナの声に紛れて、ユカの喘ぎ声がケイの耳に流れ込んできた。 「そうデス。私たちは今、セックスをしていまーす。ふふッ」 「キッサマァ〜!」 ユカ は大学生、レナは派遣家庭教師。平日の日中でも、時間が合えば会うことは可能だった。 「ユカちゃん、今どうなってるのか説明してあげたら?ハイ」 「あのね、今ね、レナちゃんのが、入ってて中で動いて…あはぁあッ!」 怒りではらわたを煮えたぎらせながらも、ケイの陰茎はパンティの中で鎌首を持ち上げようと蠢き始めている。 「あー気持ちイイ〜。もうイッちゃいそう。じゃーねー」 「おッおい!モシモシ?モシモシ!モーシ!」 通話終了の音を聞きながら、ケイは放心した。 ―― あいつ等ついに、オレ抜きでセックスをする段階になっちまった。ユカにはもう、オレの付き添いは必要なくなっちまった! 悲しい気持ちで満たされているのに、股間の男性器は膨張している。 「うううー!」 ―― こんなにモッコリしてたら、事務所に戻れないよォ〜。 ケイは半陰陽の体を呪いながら、女子トイレに駆け込んだ。 パンティーを愛用するがスカートは嫌いなケイには、事務服のスカートを穿くことに抵抗感があった。 だが、就業規則に定められている以上は穿かねばならぬと、諦めていた。 そんな彼女も、自分が女子トイレを使用することについては、いささかの躊躇いもない。 慌てて手を洗ってから個室に入り、パンティーを下ろして便座に座ってペニスを弄った。 ―― ううううう。ユカ!ユカ、こんなに好きなのに!オレは仕事してるのに、レナなんかとセックスして!バカバカァ〜! 快感が込み上げてきて、ケイは女性器の入り口を指先でなぞった。 「あっ!イク!」 ちぎり取ったトイレットペーパーの中に射精して便器に流すと、惨めさが込み上げてきた。 事務所に戻って自分の席に座るやいなや、ケイは「ハァー」と大きな溜息を吐いた。 上司の井草課長は顔をあげて、ケイに向かって「お早いお帰りで!」と大声を張り上げた。 モグラのような中年男が、真剣に怒っている。 ケイは井草を睨むと、ひっかくようなポーズで「シャー!」と威嚇。 怯えた井草は、ケイの向かいに座る30代前半・既婚女性社員の望月に、「くうーん」と甘えた声を出して助け船を求める。 しかし望月は、泣きべそ顔の井草から発せられている救援信号には気付かぬ様子で、憑かれたようにキーボードを叩いていた。 ケイは、パソコン画面に映るスクリーンセーバーの、自由自在に伸びては儚く消えてゆくリボンを見つめながら考えた。 ―― 早く、「井上パワーアップ計画」を進めないと。よーし、今日も呼び出すか! |