「なースか?なースかなースか?」

心にやましさを隠して、井上ジュンはニタニタと笑った。

放課後の、郷土研究部・部室。

二人の他は、誰もいない。

しかめっ面で、足を組んで腕組みして座っている神崎マドカが、ねっとりとした視線を、傍らに立ちつくしたジュンに向けていた。

「私、知ってるんだけど」

刹那、ジュンの笑いが凍りついた。

―― 真田か?あのシャベクリマシーン。また余計なコト、吹き込みやがったんか?

自分は今、危機に直面している。

そう思いながらも、下から見上げるマドカの真剣な顔を見るうち、ジュンのエロ心が蠢きだした。

「ドゥイーン」

擬音を発しながら、ジュンは腰をゆっくりと回転させる。

マドカはジュンの股間を、グーで殴った。

「ごあ!」

股間を押さえてその場にへたり込んだジュンは、マドカの膝にすがりつき、頬づりした。

「もっとやさしく、シ・テ」

うるんだ瞳で微笑むジュンを、マドカは足をバタバタさせてひっぺがした。

「なんで?なんで私、アンタみたいなサイテーな奴と…」

「真田がナンか言ったんか?」

ジュンの問いかけには応じず、マドカは無言でジュンを睨みつけている。

「だって!しゃーねーだろ!」

ジュンはマドカから目を逸らして、叫んだ。

「赤ん坊はママのおっぱい、大人はタバコ。じゃあオレは、何を吸えばいい?そう、オチンポを吸うしかないんだよ!」

「そんなに、オチンチンが好きなの?」

別れの予感めいたものを感じたジュンは、ようやく真面目に応対する気になった。

マドカが嫌いになったわけではなく、マドカ以外の人とも同時進行出来るのが、ジュンであった。

高原レナと、初めて肉体関係を持った頃のジュンは、それが出来なかった。

だからこそ、マドカを好きでいる自分を許せず、サヨナラを決めたのだったわけだが。

人は変わっていく。

―― マドカにはマドカの良さがあるんだよな。だけど最近は…。

レナとの関係を断ち切った時から、マドカは変わった。

ジュンは搾り取るかのようにセックスを強いてくるマドカに対して、徐々に鬱陶しさを感じ始めていた。

―― やっぱりオレは、レナさんを忘れられない。体の相性は、ダントツなんだよなあ。

自分からアクションを起こせば、きっとレナは永遠に自分の前には現れないだろうと、ジュンは確信していた。

だが、ただレナを待っていられるほど、ジュンの性欲はちっぽけではなかった。

―― マドカとの関係は、キープしときたい。なら、ココは一応、凌がにゃなんねぇか。

「真剣に、突き詰めて考えると、好きかも知れないなー。でも、嫌いになろうと努力しています」

「いいわよ。そんなに無理しなくても」

―― それってつまり、遂に愛想を尽かしたってことか?

ジュンは少し焦った。

「無理ってマドカさん!もうかなり嫌いな方向ですよ」

「私には、オチンチンは付いてないけど」

マドカの静かな口調が、ジュンを恐怖させる。

「そんなモン、付いてなくてもイーんですよ!世界中から、オチンチンなんか、なくなっちゃえ〜!んねぇ?」

ゆらりと立ち上がったマドカは、スカートのホックを外してファスナーを下ろした。

突然、マドカが脱ぎだした真意を測りかねて、ジュンは凝固している。

スカートを、ストンと足もとに落とすマドカ。

その股間には、男性器を模して造られた物体が、緑色の光沢を放ってぶら下がっていた。

「本物じゃないけど、我慢してね。これでアンタのケツ穴、ホジってあげるから!」



ジュンの脳裏に、嫌な記憶がよみがえった。

数日前。

カナメにせがまれるまま、カナメの肉棒を肛門内に迎え入れようと試みた。

あまりの痛さに途中で断念したのだが、それ以来、ジュンはずっと肛門に痛みを感じていた。

―― このカチカチのブットイ塊が、オマエの考えた罰なのか?オレを廃人にするつもりか?恐ろしい!恐ろしすぎる!

「アホウ!オマエ何考えてんねん!この、ドアホゥ!アタマおかしいんとちゃうか?ワレェー!」

お尻を押さえながら、ジュンは小走りに部室を出て行った。

「…アレ?」

あとに残されたマドカは、股間に異形の物体をぶら下げたままで、しばし思考停止状態に陥った。




フタナリ女と少年少女



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